4735] Re: バッテリーの話

From: 山村 光俊 , Date_No: 2000-05-22_08

「MF化はやっちゃいけない」と言った、やまむらです。

> <<是非専門の方にお聞きしたいのですが>>
>
> 私の疑問ですが、もしMLメンバーに専門の方がいらっ
しゃいましたら
>
> バイクや車はちゃんと充電制御しているんでしょうか?
> エンジンをかけていない時は充電していないし、かけてい
てもアイドリングでは
> ほとんど充電しないし、走っているときもそこそこ電力消
費しているし。
> 急いで充電する必要も無いので、私の憶測ですが充電電流
は小さくかつ
> 垂れ流しなのでは?
>
> よって爆発するほどの過充電になる状況は実使用上無いの
では。
> バッテリーだって年数と共に特性が変化するものだと思う
し。
> MFバッテリーに載せ換えてもとりあえず大丈夫なのはこ
の為なのでは?
> 何の科学的データも無くてすみません。
> 実際に充電電流を測ってみると良いかも。

同僚の二次電池試験の担当を通じてバッテリーメーカの専門
家に詳しいことを聞いてみました。なお、私の文章力が未熟
なためかなりの長文&回りくどい説明はお許しください。

結論から、先に述べると開放型バッテリー仕様車そのままで
MFバッテリーを使用するのは危険な行為のようです。一般
市販品ですから爆発することは無いそうですが、発熱するた
め最悪車両火災の危険性はあるとのことでした。

以下、順を追って説明します。
1)電池の特性
電池(乾電池、充電池、蓄電池等一次二次すべて含む)は、
その残存容量に応じて起電力(何も繋いで無い状態の電圧)
が変化します。充電器を用いて満タンに充電したバッテリー
の電圧を計ると14V以上あるはずです。一方、セルを回す
ことのできなくなったバッテリーの電圧を測ると10Vそこ
そこだと思います。いわゆる自動車用バッテリーは一般に1
2Vと言われていますが、満充電と空の状態ではこれだけ電
圧に変化があるわけです。
話はちょっとそれますが、普通に売られているバッテリー
チェッカー(比重計は除く)は、ただ単にバッテリーの電圧
を測っているだけにすぎません。
2)車両の発電設備
現在の車両(二輪四輪共)には直流発電器が採用されていま
す。この発電器は回転数に応じて発生する電圧が変化しま
す。このときの電流値は?と思われる方も居るでしょうが、
電流値は負荷(つまり、電気を消費する機器のことです)の
抵抗値により変化します(オームの法則)。厳密には電圧も
多少影響を受けるのですがここではとりあえず無視して話を
進めます。複雑な電気回路を用いればこの電流値を制御する
ことは可能ですが、自動車特に二輪車には使われてないそう
です。
話がそれましたが、車両の発電器の電圧は最高18Vまたは
それ以上を発生します。下は詳しく知りませんがおそらく1
1〜12V程度かと思います。普通こんなに電圧に変化が
あっては困りますよね、特に高速走行時にはランプ類は焼き
切れてしまうでしょう。そこで、レギュレーターで電圧が一
定値以上にならないように制御しているのです。
3)車両搭載時および普通の充電器での充電
走行中の充電、あるいは数千円の安い充電器での充電時は、
定電圧充電という充電方式です。これは、常に一定の電圧で
充電しようとするので、バッテリーが空に近い状態では、
「起電力が低い=充電電流に対する抵抗値も低い」状態です
から大電流値で充電します。これが満充電に近づくと「起電
力が高くなる=充電電流に対する抵抗値は高くなる」ので、
徐々に電流値は小さくなって行きます。そして、「起電力=
充電電圧」に達した時点で電流値は0(ゼロ)になり充電終
了です。
4)開放型バッテリーとMFバッテリーの違い
先日も書きましたが、構造的な大きな違いは
○開放型・・・ガスが発生しても外に逃がすようになってい
る、ガスが発生すると水が減るので補水可能
○MF型・・・完全に密閉容器になっている、電解液はゼ
リー状またはマットなどに吸収されて保持されている、少々
ガスが発生しても放電時に電解液中に取り込むような構造と
なっている、補水不要
となっています。
そして、構造以上に重要なのが終止電圧(この値で満充電と
定義する設定電圧)の違いです。
** 開放型 14.8Vくらい **
** MF型 13.65V **
と、決まっているそうです。(メーカーさん談)
つまり、この電圧以上で充電するなという数値が終止電圧な
のです。
開放型に関しては「くらい」とアバウトなのは、この電圧付
近から盛んにガス発生が始まるのでこれ以上電圧が上がらな
いらしいです。一方MF型は17〜18Vまで電圧は上がる
ようですが、その時点では正極からはO2ガスが盛んに発生
し、負極はすさまじい発熱で容器が変形、安全弁からガスが
吹くそうです(正極と負極は逆だったかも...)。H2ガ
スは発生しにくいようになっているようです、だから爆発の
危険性は無いと...ちなみに詳しい内容にについては全く
?理?解?不?能?でした。
だから、MF型に関しては「絶対」ガスが発生しない容量を
定格容量としているそうです。また、この時点では発熱もほ
とんど無いから、開放型のように充電時にバッテリーが熱く
なるということは無いとのことでした。一般市販品ですから
安全に安全を考慮して作っているそうです。

この時点で、すでに理解された方も多いと思いますが、開放
型バッテリー搭載車とMFバッテリー搭載車の大きな違い
は、レギュレーターの設定電圧の違いです。充電器も同じ。
従って、開放型バッテリー搭載車にMF型を付けると>ガス
発生>電極発熱>安全弁からガスを吹く>ということになる
「可能性」が高いらしい。安全マージンは多めに取ってある
のですぐにこうなるとは限らないそうです。ただし、これは
あくまで正常なバッテリーの場合で、劣化したバッテリーの
場合は>電極過熱>水分蒸発>容器変形>正極と負極が
ショート(短絡)>マットや容器が発火>バッテリー炎上>
となる事もあるとか...。

また、MF搭載車でもレギュレーター不良に陥ると同じプロ
セスで最悪車両火災になるそうです。車両火災にはならな
かったけど、CB400SFがレギュレーター不良でバッテ
リーから「ピー」という音とともにガスを吹いた例が身近で
あります。容器は触れないほど熱くなっていました。(あら
!また脱線)

レギュレーターを交換すればMF化は可能のようですが、今
度はジェネレータとレギュレータの相性、というか設計上の
問題は無いのかな?という気がします。この問題については
どなたかメーカーに確認してください。

さわおさんの書かれていた開放型バッテリー車とMFバッテ
リー車のレギュレーターが同じだったという事については、
確かに不思議な話ですよね。バッテリーメーカーさん曰く
「そんなはずは絶対ない」そうです。

バッテリーの寛容さは開放型の方が圧倒的にアバウトに使え
るようです。
過充電にしても、ブクブクと電気分解をするだけで特に問題
ないとか、過放電してもすぐに充電してやればほぼ復活する
らしい。
MF型は何かとシビアさが要求される、過充電の怖さは上記
の通り、過放電すると元の容量は回復しないらしい。

それから、MF搭載車に開放型バッテリーを搭載した場合で
すが、これは別に問題ないようです。ただ、メーカーとして
は決しておすすめできないと。
理由は、上記レギュレーターの設定電圧の違いにより、満充
電されない可能性があるためバッテリーの容量が定格容量に
満たない状態で長く使われると劣化を早める結果になると
か。

最後になりしたが、MFバッテリーを現在使用中の方にお尋
ねしたいのですが、普段の車両使用状況はどうなのでしょう
か?
私と、同僚で推測するには、街乗りメインで、バッテリーは
常に満充電に至ってないのではないかと思うのです
が...。高速道路を使用して長距離のツーリングに出かけ
たりすると、過充電状態になりバッテリーがすぐに死亡して
しまうと思います。

以上、長々と失礼しました。(レス漏れは無いだろう
な...)

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 山村 光俊     発信元:福岡

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